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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(オ)110号 判決 1950年11月30日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人秋山薫一の上告理由第一点について。

原判決は、「上告人は昭和一八年一〇月三日訴外竹村幸雄から、同人が訴外桜庭三之助に賃貸していた本件土地を買受け、いまだその所有権移転の登記を受けていなかつた同二〇年一一月一日三之助に対して右賃貸借解約の申入をなしたのであるが、当時三之助は上告人の所有権取得を争い、竹村幸雄との賃貸借を主張していたのであるから、右三之助に対しその所有権の取得を対抗し得ず、従つて、上告人のなした該解約の申入は無効であつたといわざるを得ないとし且つその後同二一年一月二八日に至り上告人が所有権移転の登記を受けたからといつて、前示無効であつた同二〇年一一月一日における解約の申入が申入の日に遡及してその効力を発生すべきいわれはない」旨判示したものである。さればその判旨は正当であるといわなければならない。蓋し登記を物権変動の対抗要件とした所以のものは、これにより第三者の保護を企図したものであること多言を要しないところであるから、登記による物権変動の対抗力は、その公示手続である登記を経た時期以後将来に向つてのみ発生するものと解さなければならない。登記により対抗し得るに至るものは変動した物権そのものではなく物権の変動それ自体であること勿論ではあるが、所論の如く一旦登記を経ればその登記の時期如何に拘わらず物権の変動それ自体の発生した当初に遡り一切の法律関係を恰もかかる物権の変動が当初にあつたのと同一の状態に変更する効力あるものと解することはできない。この事は仮登記予告登記等の制度(不動産登記法二条、三条、七条二項等参照)の存することに徴しても明らかであろう。所論引用の大審院判例は、民訴六八六条の特別規定に基づく競落許可決定に因る不動産の所有権取得の場合における登記に関するもので本件に適切ではない(民訴六五一条、七〇〇条参照)。されば、本件土地につき昭和二一年一月二八日になした所有権移転登記の対抗力が昭和一八年一〇月三日の買受の日に遡及することを前提として、同二〇年一一月一日の本件土地の解約申入を有効であるとする所論を排斥した原判決には所論のような違法はなく、論旨は、採用し難い。

同第二点乃至第四点について。

しかし、自作農創設特別措置法六条の二第二項四号並びに農地調整法附則(昭和二二年法律二四〇号)三条二項五号の規定は、当該農地の所有者又はその承継人が昭和二〇年一一月二三日以後において現に該農地に就き耕作の業務を行う場合においてのみ適用のある規定であり、また、右措置法は、現に耕作者である者の地位を安定し、いわゆる自作農を創設するを目的とするものであるから、本件土地のように小作地であつて、これに就き現に耕作の業務を営んでいない、従つて、単に小作料を取得すべき地位にあるのみであつて、該土地を耕作することによりて生活を営む者でない上告人の論旨二点は、上告人と訴外三之助との生活関係を比較する迄もなく失当であるといわなければならないし、また、原判決には論旨三点のような違法があるともいうことができない。なお、論旨四点は、自作地の買収による生活困難を前提とするものであるから、前述の理由によりその前提において採用し難い。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 岩松三郎)

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